奇しくも運行開始25周年を迎えるこの時期に台車に変調が。【南海ラピート】
▼新聞記事によると、8月23夕方に南海電鉄の特急ラピートが関西空港に向かう途中で、2号車と3号車の連結部から金属がこすれる音を聞いたという車掌の報告で、車両検査の担当者が同乗したが異音を確認できず、その後も難波・関空間を3往復弱運行したとのことです。このラピートでは車輛基地で点検したところ、2号車のモーターと台車をつなげる溶接部分に14センチの亀裂が見つかったとのことです。(2019年8月29日朝日新聞デジタル版)
▼国の運輸安全委員会では、重大なインシデントとして認定。27日から28日にかけて南海電鉄に対してヒヤリングを行いました。亀裂の発見を受けて、他の車両の台車を緊急点検した結果、別の車両でも溶接部分で10線との亀裂が見つかりました。この2つの亀裂以外にも、過去に別の車両の溶接部分で亀裂が確認されていました。
▼運輸安全委員会のホームページでは、今回の事案は調査中としています。
https://jtsb.mlit.go.jp/jtsb/railway/detail2.php?id=1959
▼8月30日付けの南海電鉄のホームページによる報告は次のとおりです。
http://www.nankai.co.jp/rapit_info.html
▼南海のホームページによると、今回発見された亀裂は、特急ラピート6両編成の関空寄りの2号車の難波寄りの台車の主電動機受座の裏側に長さ約140ミリの亀裂が確認されました。南海では今回の亀裂により、直ちに列車の安全運行に影響を与えるものではないと判断しています。
▼亀裂発生の原因については、運輸安全委員会の調査に全面的に協力するとともに、南海でも研究機関や台車メーカーととも原因究明に努めていくとしています。
▼運転を継続した判断は、少し甘いものと思われます。南海によると、運転指令は、車掌の異音に対する報告はこれまでに聞いたことのある音であると判断。ルールに従い車両係員を同乗させ、異音の確認、振動等の営業運転に支障をきたす状態でないことを確認し、運転継続を判断したということです。
▼台車に亀裂については、これまでもJR西日本の山陽新幹線で同様の亀裂が発見され、運転が継続された事案もあり、こうした事象については慎重に判断することが求められているにもかかわらず、今回も過去の教訓は生かされていません。大事故につながることになったかもしれない事象に対して、南海の取った判断は甘かったのではないかと思われます。
▼なお、南海では、今後の安全確保に向けた対策ついて、目視による台車の緊急点検、磁粉探傷検査による台車の緊急点検、台車枠検査マニュアルの改訂、重要部検査の見直しを行うとともに、より安全性の高い台車への変更を検討しています。
▼多くの乗客の命を預かる鉄道事業者においては、やはり基本は安全第一。列車の円滑な運行も大事ですが、台車という列車の根幹にかかわる場所の異常については慎重に判断し、勇気をもって列車を止めてほしい。それを忘れずに運行に努めてもらいたいものです。
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