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『新幹線を運転する』を読む。

▼早田森著『新幹線を運転する 何気なく乗っている東海道新幹線の、高度で優しい運転席へようこそ』(メディアファクトリー新書)を読みました。

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▼著者は、朝日新聞朝刊の「ひと」欄のコラム記事で、東海道新幹線でもっとも優秀な運転士を選ぶコンテストで優勝した方のことを目にしたことから、新幹線の運転士に会ってみたいと思ったとのことです。

▼そのコラム記事には、新横浜から名古屋直前までブレーキを使わず運転したことが紹介されていて、これに興味をもったようです。

▼昭和35年生まれということもあって、高度経済成長期を一緒に過ごしてきた仲間という親近感から、新幹線に特別の思いを抱いています。

▼第1章の「新幹線を操る」では、新幹線の運転操作をシステムと併せて紹介しています。この辺は鉄道ファンならまずよく知っているところです。しかし、日本の鉄道のすごさは定時運転です。許される誤差はプラスマイナス15秒!シミュレーションゲームでもなかなか難しい運転です。

▼定時通過(定通)を可能にさせるためには、駅間距離と残り時間を見て、瞬時で時速何キロで走行すれば定通できるか計算するそうです。ただし、地形や制限速度などの制約もいろいろある中で、いくつかの技を駆使しながら定通していく技量はまさに神業です。でも、電車でGO!などのゲームはうまくないそうです。

▼地形や風景から先を読むそうです。スキーのアルペン競技と同じように、猛スピードで走行するなかでは、先を読むことが大切なこと。また、運転士にとって、「風景は景色ではなく、知識」なのです。風景をチェックポイントにして、マスコンやブレーキ操作のタイミングを覚えていくのだそうです。

▼第2章の「新幹線運転士という仕事」では、日頃の仕事の内容が紹介されています。営業運転だけでなく、車両基地への列車の出し入れなどもあり、毎日違う時間に出勤して泊まりを2回続けてあとの2日が休みといった不規則な勤務形態にはびっくりです。

▼JR東海では、100系になって、1名の運転士体制になってから、運転士も車掌を兼務するようになったことは初めて知りました。通常新幹線には3名の車掌が乗務するが、運転士の資格を持ったベテラン車掌は、「車掌長」ではなく、「列車長」と呼ばれるそうです。

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▼この本で紹介されている運転士さんは、車掌をやることになって、最初は戸惑ったそうですが、全国のあらゆるところから、いろいろな人が新幹線に乗りに来てくれるという実感を感じることができて、新幹線の運転により大きな誇りを覚えるようになって、人間的にも成長できたと思っているそうです。誠に謙虚な姿勢です。

▼第3章の「運転席から見える風景」では、まさに時速300キロに近い速度で走行する運転席からの風景について紹介されています。ここで印象的なことは、冒頭に出てきた社内コンテストの開催に趣旨に関連して、この運転士さんの考え方が紹介されていることです。少し長くなりますが、引用します。

 「・・・私が今日までこの仕事を続けてこられたのも、見習い時代に多くの諸先輩方から貴重な教えをいただくことができた賜物。人が人を育てることは、国鉄発足以来のわが社の伝統でもあります。」

 「指導操縦者として、私も若手育成のお手伝いをしていますが、他にもできることがあれば、積極的にかかわっていきたい。それが、鉄道人として私を鍛え上げてくれた諸先輩方への、私なりの恩返しだと思います。」

 「機関車が鉄道交通の主役を担っていた頃、かつての機関士や運転士には、職人気質の人も多かった。『技術は習うものじゃない、盗むものだ』なんていわれていた時代もあったようです。しかし、いまはもはや、そんな時代ではありませんね。役に立つ知識や技術があれば、みんなで積極的に共有すべき。なんらかの形でデータベース化すれば、さらに理想的でしょう。」

 「これからの地球環境を考えれば、自動車・航空機から鉄道・船舶へと、輸送手段の主役がもう一度入れ替わる時代が来るかもしれない。そのときのために、私たちはいま持っている技術と知識を大切に守っていかなければならないのです。」

▼どうですか。大したお考えをお持ちだと思いませんか。感動しました。しっかりした考えをもった、素晴らしい鉄道人がいらっしゃるんですね。

▼第4章では、「お客様の知らない新幹線」と題して、ちょっと濃い話が載っていますが、鉄道ファンにとっては周知の事実でしょうか。

▼第5章の「新幹線運転士への道程」では、紹介されている運転士さんの新幹線運転士になるまでの道筋が描かれています。子どものころから鉄道が大好きだったことがよくわかります。身延線は意外に運転が難しいそうです。急カーブ、急勾配など運転技術がかなり必要な線区だったようです。この章は、鉄道を目指そうとする若い方の指針にもなります。

▼「巻末企画 東海道新幹線運転士スペシャル座談会」は紹介されている運転士さんのほか4名の現役運転士が参加されての裏話など。

▼以上の構成でこの本はなっています。一気にグーッと読ませる著者の筆致がよかったです。新幹線の運転士が非常にストイックに毎日仕事に向けて向かわれている姿勢はなかなか頭が下がるものがあります。ちょっと気持ちがよくなるお話ではありました。

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コメント

昔読んだ雑誌に、
「新幹線の運転はATCなのでやることがあまりなく
睡魔と闘うのが大変」
みたいな記述があったので鵜呑みにしていたのですが、
民営化して速度向上し、ダイヤもタイトになった現在では
かなり様子がちがうようですね。
いずれにしても、大変なお仕事ですm(_ _)m。

投稿: るーと | 2011年3月 9日 (水) 01時05分

るーとさん。 

たしかにゲームでやると眠くなります。でも、実際の運転席を見たことがありますが、ノッチとブレーキ操作がかなり忙しかった記憶があります。

定時運行は大変そうです。

投稿: kumoha313 | 2011年3月 9日 (水) 21時22分

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